瑠璃色の空の向こう・序章

『ワタシの名前の瑠璃色はね、空の色なんだよ。夜が明ける直前の透明な空気の中での藍色と紫の混じった色』

ルリはそう言って俺の目を覗き込んだ。

『空の色かぁ。瑠璃ってアレでしょ、ラピスラズリだっけ?宝石の。でも、ルリの目は茶色いからトパーズみたいだね』

言いながら俺は、ルリの頭に鼻を押し付け髪の匂いを嗅ぐ。

ルリの髪はいつも甘い匂いがする。

シャンプーの香りなのか、アプリコットに似た匂い。

俺はこの、ルリの髪の匂いが大好きだった。

『お父さんが付けてくれたんだ。夜明け前の空から太陽が昇っていく様に、人生がイイ事ばかり起きますようにって』

『イイ事起きた?』

『起きたよ!ハル君と会えた』

無邪気に笑うルリ。

『そいつぁよかった』

俺はちょっと照れてしまい、そんな軽口でごまかした。

『でもね、イイ事はまだ始まったばかりなんだよ、太陽がどんどん昇って行く様に、これからもハル君とずっと一緒にいて、もっともっと幸せになるんだから!』

相当に恥ずかしい台詞を平気で言ってのけて満面の笑みを浮かべるルリ。

愛しさが胸に込み上げて、俺はまたルリの頭に鼻を押し付ける。

『うん。ずっと一緒だよ』

結論から言えば、その約束は守られる事は無かった。

彼女は独りで行ってしまった。

その、夜明け前の藍色と紫の色の向こうへ……

20年近く会っていない人の顔を鮮明に思い浮かべる事が出来ますか?

俺には、18年前に見たその笑顔を睫毛の一本に至るまで鮮明に思い出せる人がいます。

今思えば、アレは『愛』では無かったと思います。

でも……

『恋』でした。

100%純粋な恋でした。

このお話は、そんな純粋な『恋』のお話です。

次回

第1章『出会い』


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